作業の標準時間とは
「標準時間」について説明します。
目次
標準時間とは
標準時間とは、標準の熟練度をもつ作業者が、一定の設備と作業方法により、既定された品質の製品を生産するために、標準の作業スピードで作業をおこなう場合の作業時間です。
つまり、「標準時間」は「標準」の人がその工程で製品を生産する「時間」になります。
標準時間は、大きく正味作業時間と余裕時間から構成されています。
標準時間を設定するには、直接観測法、ワークサンプリング法、PTS法、標準資料法、実績資料法などの手法があります。
「負荷計画」を計算するためには、製品別の「標準工数」が必要です。
「標準工数」を決めるためには、「標準時間」が必要になります。
また、「標準時間」は、「基準日程(生産リードタイム)」の基礎データにもなります。
標準工数(工数)とは
標準工数とは、仕事量の単位の一つで作業の所要時間(延べ作業時間)のことです。
1個または、1ロットの製品を作るために必要な作業時間です。
単に「工数」(こうすう)と呼ぶこともあります。
標準工数(工数)には、主に以下の3種類があります。
- 人分
1工数1分です。 - 人時
1工数1時間 です。 - 人日
1工数1日です。
普通は「人時」 を使います。
例えば、
「人時」で、「100工数」の仕事がある場合、「1人」で作業すると「100時間」かかります。
「2人」で作業すると「50時間」になります。
標準時間の目的
「標準時間」には次のような目的があります。
- 作業者の1日の公平的な「仕事量」を決定します。
- 生産するために必要な作業者や機械設備などの「必要工数」(負荷)の算定や人数、人員の「配置計画」などに使用します。
- 「日程計画(生産計画)」を作成するための「基準日程(生産リードタイム)」の設定に使用します。
- 「作業方法」の比較、改善や「生産能率」の測定に使用します。
- 作業者の「賃率」または「賃率決定」の資料に使用します。
- 「原価見積」と「販売価格」の決定に使用します。
などです。
標準時間の構成
「標準時間」は、次のような構成になっています。
構成とその説明です。
構成 | 説明と例 | ||
---|---|---|---|
作 業 標 準 時 間 |
正 味 作 業 時 間 |
主作業時間 | 実質的な作業時間のことです。 機械自動送り作業、機械操作作業、手作業(組立作業) |
付随作業時間 | 工具や機械の手入れなどに費やされた時間です。 機械への材料取り付け、取り外し作業 |
||
余 裕 時 間 |
作業余裕 | 工具の取り替え、注油、掃除、機械調整(3〜5%) | |
職場余裕 | 材料・工具待ち、クレーン待ち、連絡、整頓(3〜5%) | ||
用達余裕 (ようたしよゆう) |
汗ぬぐい、水飲み、用便(3〜5%) | ||
疲れ余裕 | 休憩(重作業30%、中作業20%、軽作業10%) | ||
準 備 標 準 時 間 |
準備正味時間 | 作業、部品・材料、治工具などの準備、片づけ | |
準備余裕時間 | 主として疲れ余裕 |
<<コメント>>
「 余裕時間」とは、管理上の欠陥や個人的な理由、疲労などによって作業が中断されたために乗じる遅延時間です。
( )内は一般的な「余裕率」を示しています。割合です。
「余裕率」は次のように計算します。
余裕率=余裕時間 ÷ 正味作業時間
です。
「標準時間」は次のようになります。
標準時間 = (作業標準時間) + (準備標準時間)
= (正味作業時間) X (1+余裕率)
「標準時間」の構成は、「IE(インダストリアルエンジニアリング)」の「動作分析(作業分析)」や「時間分析」をおこなうときの作業の分類と同じです。
別途、説明します。
正味作業時間の設定方法
正味作業時間とは、正味時間とも言い、実質的作業時間のことで、本来の作業だけに費やされた主体作業時間と工具や機械の手入れなどに費やされた不随作業時間とから成り立っています。
「標準時間」の中で、一番重要なのが「正味作業時間」です。
実際に作業者が作業している時間です。
「正味作業時間」や「準備正味時間」などがあります。
「正味作業時間」はどのような方法で決めるのでしょうか。
「正味作業時間」は、「IE(Industrial Engineering:インダストリルエンジニアリング)」という手法を使用します。
かなり昔からあります。
工場のレイアウトや工程、作業者を分析するための手法です。
その中に、「時間分析」をおこなうやり方があります。
「時間分析」をおこなって作業の「正味作業時間」を決めるには、次の2つの方法があります。
作業者の作業を直接測定する方法
作業者の作業を直接測定する方法には、次のような方法があります。直接観測法
ストップウオッチ、ビデオカメラなどの機器を用いて、作業を「直接観測」し、時間の測定をおこなう方法です。
●参考ページ
ワークサンプリング法
一定の時間内において、あらかじめランダム(無作為)に選んだ時刻に作業者や機械の動きを瞬間的に観測して記録、集計し、このデータに基づいて作業状態の発生の割合を「統計的手法」を用いて推定する方法です。「正味作業時間」や「余裕時間」の割合を客観的に分析することができます。
●参考ページ
あらかじめ実験や経験で得た資料を組み合わせて算定する方法
あらかじめ実験や経験で得た資料を組み合わせて算定する方法には、次のような方法があります。PTS法
「PTS法」は、「predetemined time standard system」の略です。日本語では、「既定時間標準法」と呼ばれています。
作業を構成する「基本動作」について「標準時間」が決められています。
この時間値を組み合わせていけば、「レイティング」の手間を省いて、
いろいろな作業の標準時間を正しく求めることができます。
●代表的手法としては
- WF法(work factor system:ワークファクター(作業因子)法)
- MTM法(method time measurement system:動作時間測定法)
などがあります。
「レイティング」とは、作業者の技能度、努力度、安定度などによって
影響される作業の観測時間の平均値を標準の技能をもつ作業者の
作業速度を100%として、評価することです。
標準の作業者のレベルに換算するという作業です。
●参考ページ
標準資料法
「時間研究」や「PTS法」などで過去に測定したデータをもとに、「要素作業別」の「標準時間」を作成します。その「標準時間」を使って新しい作業の「標準時間」を求めます。
実績資料法
作業日報などで実績時間を計算して1日の生産量を使って、「標準時間」を決めてゆきます。
●「基礎情報」の関連ページです。
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